自家醸造の必要性

じきの畑がある余市町ではタケノコが如くワイナリーが立ち始めています。
今後3年以内に10件以上増えるそうな。
この流れは一時の流行りでなく、もはや恒常的なもののようにも感じます。
90年代の地ビールブームとは違う…と思います。

ただ、じきの畑に関していうと自家醸造への切り替えは今のことろ考えていません。
少なくとも10年間は10Rワイナリーでブルースさんの下で研修&委託醸造予定です。

なぜか?

自家醸造への切り替えを急ぐことに価値を見い出せないからです。

この地で自家醸造(独り立ち)をするために大事だなと感じることは大きく2つあります(細かいことはたくさんありますけど)
①道内他ワイナリーでの下積み・研修を重ね技術・醸造期間中の蔵での動きを習得すること
⇒北海道産のヴィニフェラに触れながら醸造を学び、自分の手札を可能な限り多く用意することが大事
これについては、余市の葡萄を使ってワインを造る上で世界で最も良い試しの場になるのが10Rだと確信しています。
理由としては、醸造期間中に道内のいろいろな産地のヴィニフェラが60t~70t入荷するため、道内で栽培された葡萄に対してどのようなアプローチをかけたら結果として、どのようなワインが造れるのかという知見が得られるためです。
とにかく、サンプル数は膨大です。
10Rに通い始めて4年目ですが、色々な生産者の葡萄に接しながらそれぞれの葡萄に対して当事者意識を持って醸造を経験すると、得られる知見は自家醸造とは全く比べ物にならないです。
一時は時間ができる冬に南半球へ行ってみたいなと思うこともありましたが、毎年通うのは違うように思いました。
なぜなら今後の人生を余市で過ごし、余市の葡萄(北海道の葡萄)でワインを造るのに、ポテンシャルの異なる海外の葡萄でワインを造る勉強をすることに疑問を持ったからです。
知らなかった技術・知見を得られるのはあると思いますが、1,2年で良いと個人的には思いますし、毎年行くのは違うのかなという感じです。10Rには海外のワインメーカーも来ますので、話は色々できますしね。
自分たちのワインはこの地(北海道)の葡萄でしか造らないのですから、とにかく北海道の葡萄の知見を増やしたいと思うのは当然です。

②造り手目線でのワインテイスティング力
醸造を始めて特に感じることが、このテイスティング力が重要なのだということです。これがないと自家醸造は厳しいなと個人的には感じています。
これがないと困るのが作業のタイミングの問題です。
野生酵母を使っての醸造で非常に重要だと感じるのは次の作業へ移行する、或いは危うい状況を察知して処置を施すタイミングだと思っています。
例えば、培養酵母のように毎回キッチリと糖を食いきるということが、野生酵母でやるとキッチリしないことがあります(野生酵母の場合、多くの場面でビシッと線引きされていないイメージです)
そのような時の判断として、その時のワインの状況をテイスティングし次段階へ移行してよいかどうかを見極めるのが大事です。
これは葡萄が蔵に入荷してから瓶詰までずーーーーっと続きます。
これに関しては、ワインを飲むことで経験値を増やし、自身の中に色調・香・味の引き出しを沢山蓄えることが大事だと思います。テイスティング能力は、ある意味で自分の目指すワインへ近づけるために必要なツールだと確信しています。

それと10Rでやることでメリットに感じることは、委託醸造分で試してみたいことを実践でき、危ういところはブルースさんからアドバイスをもらえるというところです。つまり、危ない方向へ進んでいて本人が気づいていなくても救ってくれる。言うなれば、足を踏み外しづらいのです。
試したいことは色々ありますが、振り切れたワインには決してしたくないと考えているので、この環境は非常に有り難いです。

あ、そうそう。
委託醸造分だと経営的に厳しいのではないかというのがあると思います。
これに関しては6,000本規模で委託が出来れば全く問題ありません。
じきの畑は将来10,000本~15,000本規模を目指しているので、更に増えれば経営的な安定度も増します。

うだうだ書いてきましたが、とにかく今は自分の手札を増やしたい一心です。
ラブルスカでもリンゴでもなく、ヴィニフェラで自分の目指すスタイルのワインを造りたい。
1年目で感じた焦りより、今は更に習得しなければならないことが山積しているように感じます。
とにかく1か月後には仕込みが開始されます。

気を引き締めて臨みたいと思っています。

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