やっぱり思うこと

2022vt仕込みも大詰めとなり、醸造シーズンの岩見沢生活も両手で数えるほどになりました。

自分なりに病果が広がらない範囲で引っ張れるだけ引っ張りました。
収穫の大多数は10月の下旬に固まる感じになり、食味・分析値においても満足しています。
収量も順調に伸びました。
窒素の循環を考えた時にちょうど良いレベルで畑が維持できる収量くらいに落ち着いたことはとても良かったです(収量コントロールをした上で)
今のことろ発酵は順調で、白のいくつかは発酵が終了しつつあります。
赤はコールドソーク中です。
下部のマストではサッカロミセス属が弱く、ですがしっかりと発酵を続け、ベリー内では酵素によるアルコール置換が行われています。

所で、岩見沢シェアハウスのメンツと先日飲んだ時改めて思ったことがあります。
それは農業に取り組む姿勢、意識について。
自分は有機だとか自然農だとか慣行農法だとかぶっちゃけ葡萄の質においてはそこまで変わらないと思っています。
なので、有機「だから」、自然農「だから」という理由で異様に高い価値を付けるのは違和感があるのです(付加価値はあると思います)
野菜にしろ、ジュースにしろ、もちろんワインも。
そして、最近有機、オーガニックだとか殊更強調される風潮がありますが、本質はそんなことではないということです。
「その人間が何を目的に農業をしているのか」
その点だけです。

有機JAS認証でも使える資材はご存じの通りいくつもあります。
その中には認められている「農薬」もあります。
他には分解されないとのことで、シリコン製の刈払いブレードやナイロンコード、CCA木杭(CCAは相当に疑問符が付きますが)なんかもそうです。

でも、有機を謳う条件さえ満たせば何を行ってもいいのでしょうか?(それ以前にそれすら満たしてもいない人も大勢いますね)

有毒性が多方面から指摘されているCCAは有機でも認められているから普通に使う(今後有機認証はされないはずです)、ナイロンコードは目に見えないくらい細かく刻まれて畑に飛散し、回収はできなくなるけれども有機での使用が禁止されていないからいくらでも使う(これ喰う動物がいないだけでマイクロプラスティック問題と同じですから)
CCA処理の資材に関しては本当に危険だと確信しています。
野積みにしている状態で経年させると土壌へのヒ素、クロムの流出が顕著で植物や地下水への影響が高確率で発生することが証明されています(銅はそこまで高くないとの報告)もちろん野焼きなど論外です。
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010781048.pdf
昭和40、50年代に発表されている古い文献にはCCAは環境、人体に対して問題ないという報告が見られますが、近年の報告を見る限りその根拠には相当に疑問があります。
本当にCCAの使用だけは控えてもらいたいです。
あと有機JAS認証では認められていませんが光分解性テープナーについても同じです。
あれは分解ではなく、劣化→崩壊という流れです。
光による劣化でプラスチックが硬化し、その後崩壊していくというものだと思います。
畑には目に見えないだけでいつまでも細かいプラスチックが残留しますよ。
M〇Xに問い合わせましたが、成分など詳しいことは企業秘密のようでお教えくださいませんでした。
乳酸菌が作っている生分解性マルチとは別物です(これも有機JASでは使用できませんが)

結局、これらって本人が何を目的にしているのかというと「有機」という言葉を使いたい、その一点だけだと思うのです。
これらを使うと確かに作業は大幅に楽になります。
木杭の打ち換えは必要ありませんし、葡萄の樹を傷つけるリスクも減る。
でもそれって、未来に残す畑環境や地球環境、経済面以外の永続的な営農に繋がることなんでしょうか?

私には疑問です。

私は有機でやっているのであれば、有機JASは常々取るべきだと考えています。
書類が面倒、余計な出費なんてのは言い訳でしかないと思います。
取るべきだと考える理由は、「有機」「オーガニック」を言いたいからではありません。
過去にもこのブログで記載しましたが、一つは消費者への担保としてです。

顔の見える関係で地域内で消費される米や野菜を自然農や有機で栽培しているのであれば有機JASなんか取る必要など全くないと考えています。
ですが、加工品、特にワインなどは、「いつ・誰が・どのvtを・どこで」消費するか分かりません。
有機のみにこだわって飲むワインを選択している人はそう多くはないと思いますが、そのような人たちに何も言わずこのような第三者機関の認証は担保となると思うのです。逆に、例えばですが自然農や有機で野菜類を育て、お客さんの大多数が顔の見える関係を築けているような素晴らしい環境下であるのならば、有機JAS認証を取る必要は全くないと考えています。なぜなら、お互いがその人となりを理解しあい、互いに信頼関係が築けているからです。
私が調査対象にしていたCSAの営農形態は正にそのような営農形態ですね。

ちなみにここ最近有機加工酒類(醸造所の有機認証)についても管轄が国税から農水に変わったことで、ある意味お酒においても有機認証を取得しやすくなりました。
ですが、自分はそこに対しては全く興味がありません。
この大地で農業を行う上での考え、指針、哲学においてやっていることがJAS有機認証の延長線上にあるからだけで、醸造所での認証には意味がないと思うからです。
なのでワインのエチケットに有機JAS認証マーク貼りたいとは全く思いません。

加えて似非有機農業の跋扈も気になります。
そもそも有機JAS法が制定された背景は、90年代後半に市場にあふれた数多くの似非有機農産物に端を発します。
少しでも有機肥料を与えたから「有機」農産物を謳うなんてことはザラにありました。
自分も今から15年くらい前に有機農家の経済分析を行っていましたが、自称有機農家の行っていることの「いい加減さ」も多く見てきました。
大概彼らは有機JASを見下していますが、有機JASを取得できるのは半数も居ない印象でした。
でも、今跋扈しているそれは本質的には90年代後半に起こったことと大差がないと感じています。
それは文句としての「有機」が欲しい人たちという共通項が見えるからなんだと思います。

自分は環境に負荷をかけない永続的な生活を送りたいという想いで農業に携わっています。
その上で先ほどの理由が加わり有機JAS認証を取っています。
なので、有機JASで認められていても使っていない資材は数多くあります。
聞かれれば答えますが、積極的にそれを言う気もありません。

自分に正直に正々堂々と営農、醸造を行い続けたいを改めて思った飲み会でした。

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