将来の葡萄産地をかんがえてみた

北海道の特に余市・仁木エリア、そしてモンティーユが入植したという事で函館、また岩見沢は、葡萄産地としてもしかしたら世界的に注目を集めつつあるのかもしれません。
そう感じたのは今年度の余市町の協力隊の隊員に香港人と台湾人が入り、今後も余市町でワインに携わりたいという意向があるという事を聞いたからでした(人伝ですが)

冬の間、今後この葡萄産地がどのような変遷を辿るのか色々考えを巡らせていました。
何となくですが、最近だとこのエリアでは個人の新規入植希望者が減り、逆に法人が増えてきた印象があります。
もしかしたら役場で帰らされている個人がいるのかもしれませんが。
異業法人からの新規農業参入については全く否定するつもりはないですが、問題はその先にあると考えています。

この地域は首長や発言力のあるワイン関係者含め、法人格の受け入れについては前向きな印象があります。

異業法人の新規参入となると3,4年という短いスパンでの損益について考えることが多いのかな?と考えています。
現に一昨年仁木町にあった、ある法人管轄のヴィンヤードは札幌の法人へ畑を売りました。
岩見沢方面でもワイナリーの売買の話も聞きますし、余市・仁木では個人から生産法人への畑販売もよく聞きます。
今であればワイン葡萄畑ならば農地購入時より高価格で転売が可能な場合も十分にあると思います(農業委員会が絡まない形を取れば)
異業種から来たのであれば投機的な志向を持ちつつ営農を行うことは当然ですし、ほぼ居ないですが個人でやっていてもそうなのかな?と感じる方も中にはいます。

そこで将来起こるのではないか?と感じていることが、海外資本への農地販売です。
これについては農地法第3条が発動し、農業委員会の監視があるため農地売買については制限がかかるのでは?とお思いかもしれません。
ただ、これには抜け道があります。
例えば法人Aが個人の農業者から農地を購入し、農業生産法人Bを設立したあと3,4年経営し、販売したい意向が出てきたときに購入意志のある法人Cが農業生産法人Bごと買収するケースです。
M&Aという言い方が合っているのか分かりませんが、企業買収を行う場合は代表者の名前が変わるだけであって、農業委員会から見た時の農業生産法人Bの存在は変わるものではありません。
そのため、この際の企業間売買においては農業委員会が出てくることはありません。

ここからが私が不安視していることです。

ご存じの通り、北海道の土地は現在水資源、観光資源含め海外資本に購入されていっています。
隣村のkiroroスキーリゾートやTOMO PLAYLAND、ニセコ町のスキーリゾートなどはその典型だと思います。
不安なところというのは、昨今の日本ワインブームを背景にワイン葡萄産地としての認知度が上がりつつある、余市や仁木、函館のヴィンヤード、ワイナリーに対し、食指が動いている海外資本があるのではないかという事です。
現に今年度から協力隊としてやってきた香港や台湾の方は北海道のワインに興味を持っていることから、海外の人たちが興味を持ち始めていることは事実だと思います。
そこに対して3,4年で利益が出ず、当初から投機的な意味合いも含めて農地を運営していた日本の農業法人に海外資本が購入意志を持っていることが分かれば農地を売らないわけがないのかな?と感じています。

これについては北海道だけの問題なのかな?とは思っている部分はあります。
理由としては、北海道については農地を「売ること」についてのハードルが低いことが挙げられます。

また、ニセコが海外資本だらけのスキーリゾートとなった背景には2000年代前半にNACを創業したロス・フィンドレー氏の存在があります。
彼がニセコの自然や雪質の高さに驚き、海外へその魅力を発信したことが現在のニセコ山田地区を形成させています。
そうなるとニセコの時のように現地に繋がりを持つ海外の方がワイン葡萄関係の仕事に就くという事が資本力のある法人の参入を誘導することもあるのかな?と考えてしまう自分がいます。

北海道のワイン産地にはそのポテンシャルがあるようにも思いますし、海外からの入植を目指す人が来た現状から考えるに海外資本によるヴィンヤードやワイナリー経営も近い将来始まるかもしれません。
それが良いことなのか悪いことなのかは分かりません。
しかし自分は静かに静かに、例えば紙に水が滲んでいくように徐々にじんわりと北海道のワインのことが世間に広まれば良いなと感じています。
前のめり、食い気味な感じで北海道のワインを世界へ向けて発信しようとする意志には危うさを感じています。

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