小規模ワイン農家の持続可能性について

今シーズンの収穫も残すところあとわずか。
醸造は来月いっぱいまで気の抜けないところ。

今年は夏の暑さ、湿気に加えて収穫期の鳥害の多さと、農家にとっては深刻な被害を多く耳にしました。一方で余市は空知や蘭越など他地域と比べたら鳥害は多くは無い印象です(例年よりは多いですが)話に聞いている限り、鳥害の影響で収量がなくなるレベルというのは自分の周りでは居ないように思います。それ以上に影響を受けたのが、気温上昇と湿度の高さからくる病果だと感じています。樹勢コントロールと土壌から如何に窒素分を抜といった(菌根菌や根粒菌を含めた窒素固定細菌の固定以上の窒素量を無くす)施しを意識して行っているが肝だったかと思います。
ウチの白品種は樹がより落ち着き始め、房の大きさが小さくなった影響で昨対で2割減程度ですが、マストの質は上がっています。黒品種は育てているのが中生種ということもあり、引っ張っている影響で病気は出ていますが、目も当てられないほどではありません。結局どこに力点が置かれるかだけな気がします。

それと酸の落ち。
葡萄は今シーズンのような気温上昇と夜温の低下がない状況であれば、除葉を無くそうが何しようがリンゴ酸やクエン酸が呼吸で消費することは自明です。酸の消費は日射が当たることではなく、気温の影響が大きいです。このようなシーズンでは引っ張る場合、酸の落ちを抑えるような栽培方法はないように思います。強樹勢にして熟すタイミングを後ろ倒しにするとか、大量に房をつけて熟させないとかは出来ますが、ワインへの悪影響が大きくてやる価値は全く見出せません。そして酸の落ちは糸状菌の餌食となります。
やはりそこで重要なのは植物体の窒素量だと考えます。病気に侵されたり虫に攻撃されたりするのはそこです。自分は葡萄畑において他からの窒素供給は必要ないと感じます(反収1tとか目指さない限り)。窒素固定細菌、菌根菌の働きだけで十分です。今シーズン、反収500kg以下とかでやっていて病果が出ているのであればやはり窒素量が問題なんだろうと思います。あとは水捌けか。軟化期以前の葡萄がベトや灰カビ、バンプに侵されるのは分かりますが、ヴェレゾン後に病果がエライことになっている畑は土壌のバランスに何某かの問題を抱えているように思います(極端に引っ張ることを除いて)。これも農業の持続可能性に繋がる気がします。

結局、病果が大量に出ると病果除去が非常に手間になります(病果関係なく醸造されているところもありますが)。小規模生産で動ける人間が家族のみという農家の場合には、他の葡萄の収穫が待っているのも関わらず、そんなことに手が回せるか甚だ疑問です。そして私も含め多くの小規模生産者を見るとボランティアの手を借りているのが実情です。集めているのか、向こうから来てくれるのかは関係ありません。それって価格には反映されていませんが、反映したとしたら結構な値段のワインになってしまうんだろうと思います。
ボランティアさんに来ていただくことは大変ありがたいですし、助かる面があるのは事実です。でも、「自分たちの中でしっかり回す農業」というものを考えた際、ボランティアさんの力を最初からアテにする営農はどうなのか?と思うようになっています。突き詰めると「それって自分の造ったワインなのか?」とも考えられます。みんなのワインならいいのかな?いくら病果が出ても助けてくれる人がいるから大丈夫、と少しでも思う気があるのなら、だいぶ温い感じがします。

収穫期については自分は色んな方の力を借りてしまっているので中々難しいですし、変えていかなければとは思っています。うちは今シーズン、収穫期以前のボラさんのお手伝いは極力絞ってお断りするよう努め、自分の力だけでやろうという試みをしました。来年以降どこまで出来るのか、やり方についても色々試行していく必要があるなと感じています。
ボラさんの力を借りなくても持続できる営農とは?色々考えさせられるシーズンでもありました。

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